「荷物は、遠くにあるものから集めたほうが早い」。仕事の段取りの話で、ときどき聞くたとえです。本当にそうなのか。
ちょうどその頃、「Claude Opus 5.5なら、動画AIなしでアニメが作れる」という見出しを見かけました。そこで、このたとえをClaudeに頼んで、ゲームのように動くアニメーションで比べてもらいました。できあがったものが、下の「空き缶ひろい競争」です。
上は、最初から最後まで流した動画です。記事の中では、実際に動くものも触れます。
まずは遊んでみてください
ルールはシンプルです。ゴールから2mおきに空き缶を10個並べ、2人が同じ速さで歩いてゴールまで運びます。青い人は遠くの缶から、黄色い人は近くの缶から拾います。
右上のボタンで、「1個ずつ運ぶ」と「3個まで持てる」の2つのルールを切り替えられます。速さは×1・×2・×4から選べます。
答え:1個ずつなら、どっちも同じ
「1個ずつ運ぶ」で動かすと、2人は同時にゴールします。途中で見比べると、運んだ缶の数はちがうのに、歩いた距離はいつも同じです。
理由は単純です。1個ずつ運ぶなら、どの缶も「行って戻る」ので、その缶までの距離の2倍を歩きます。拾う順番を変えても、足し算の順番が入れ替わるだけで、合計は変わりません。

つまり、「遠くから拾うと早い」は、このルールのままでは成り立ちません。
遠くからは損をしない。差がつくのは「端数」が出るとき
ルールを「3個まで持てる(途中で拾える)」に切り替えると、結果が変わります。遠くからは88m、近くからは112m。遠くからのほうが24m短くなります。ただし、まとめて運べれば必ず差がつく、というわけではありません(このあと説明します)。

1回の往復の距離は、その回で拾う缶のうち「いちばん遠い缶」で決まります。遠くから拾うと、いちばん遠い20mまで行くのは最初の1回だけで、帰り道に18m・16mの缶も一緒に拾えます。最後の往復は2mだけです。近くから拾うと、最後に20mの缶を1個だけ取りに行く往復が残ってしまいます。
何個まで持てたら、差がつく?
持てる数を1個から10個まで変えて、全部計算してみました。
| 1回に持てる数 | 遠くから | 近くから | 差 |
|---|---|---|---|
| 1個 | 220m | 220m | 0(同じ) |
| 2個 | 120m | 120m | 0(同じ) |
| 3個 | 88m | 112m | 24m |
| 4個 | 72m | 88m | 16m |
| 5個 | 60m | 60m | 0(同じ) |
| 6〜9個 | 56〜44m | 64〜76m | 8〜32m |
| 10個 | 40m | 40m | 0(同じ) |
差がつくのは、10個が持てる数で割り切れないときだけです。割り切れないと、どこかで「持てる数より少ない缶だけを運ぶ回」が出ます。遠くから拾うと、その半端な回がいちばん近くの缶になるので、短く済みます。近くから拾うと、半端な回がいちばん遠くの缶になってしまいます。
2個ずつ・5個ずつのように割り切れるときは、どちらから拾っても同じです。つまり、遠くから拾って損をすることはないけれど、いつも得をするわけでもない、というのが正確な答えです。

仕事にたとえると、「遠くの用事から片づける」で損をすることはない。ただ、得をするのは、帰り道で小さな用事も一緒に済ませられて、しかも最後に中途半端な用事が残るときです。1つずつしか運べない仕事なら、順番を変えても楽にはならない。
どうやって作ったのか
ここからは、作り方の話です。専門的なことは省いて、流れだけ書きます。
1. 頼んだのは、たとえ話とひとこと
空き缶を2mおきに10個置いて、遠くから拾う場合と近くから拾う場合を比べたい。ビジュアルも分かりやすいゲーム的な表現で。頼んだのは、だいたいこれだけです。
2. 先に「カンプ」を見せてもらった
いきなり動くものを作るのではなく、まず静止画のデザイン案(カンプ)を出してもらいました。2本のレーン、ゴール、目盛り、歩いた距離のメーター、スタートボタン。この時点で、全体の見た目と、どの数字を見せるかを決めました。

3. 「いいね」のあとは、動くものが届いた
カンプでよければ、次は実際に動く形です。ボタンを押すと2人が歩き出し、缶を持つと頭の上に積まれ、ゴールに置くと箱に入ります。途中で、吹き出しの文字が変な位置で折れる、「完了!」の札が缶に重なる、スマホだと文字が小さすぎる、といったところが見つかり、直してもらいました。
4. 最後に、動画にも書き出した
ブログには動くものをそのまま埋め込み、インスタやXには動画を使います。動画は、動くアニメーションを1コマずつ撮ってつなげたものです。見た目は、ブラウザで動くものとまったく同じです。
「アニメーション生成機能」ではない
ひとつ正確に書いておきます。Claude Opus 5.5に「アニメーションを作る専用の機能」があるわけではありません。Anthropicの発表にも、その名前の機能は出てきません。
実際にやっていることは、ClaudeがWebページを作る言葉(HTML・CSS・JavaScript)でアニメーションを書く、ということです。動画を生成するAIとちがって、できあがるのは「ブラウザで動くプログラム」なので、次のような特徴があります。
- 数字が正確:距離や缶の数は、計算して動かしているので、見た目と数字がずれない
- あとから直せる:「札を小さく」「色を変えて」と言葉で頼めば、その部分だけ直る
- 触って遊べる:ボタンでルールを切り替えるなど、見る人が操作できる
- 軽い:1つのファイルだけで動き、ネットにつながっていなくても開ける

「動画AIなしでアニメが作れる」という言い方は、うそではないけれど、中身は「AIがWebの言葉でアニメを書いてくれる」です。ここを分かっておくと、何に使えるかが見えてきます。
仕事ではどう使えそう?
KAKERUデザインとしての見立てです。
1. 提案書の「動く図解」
「A案とB案で何が変わるか」を、数字の表ではなく、動きで見せられます。今回のように、同じ条件で2つを並べて走らせるだけでも、説明の時間がぐっと短くなります。
2. 社内研修や勉強会の教材
段取り、在庫、動線など、頭で考えるとややこしい話を、スタートボタン1つで見せられます。ルールを切り替えられるので、「もしこうだったら?」をその場で試せます。
3. ホームページやLPの説明パーツ
サービスの仕組みや、導入前と導入後の違いを、動くパーツとしてページに埋め込めます。1つのファイルで動くので、今のホームページにも組み込みやすいです。
4. SNS用の短い動画の素材
動くものを作っておけば、そこから縦長の動画を書き出せます。インスタのリールやXに、そのまま使えます。
作るときに気をつけたいこと
- 前提と数字は人が確かめる:今回も、220m・88m・112mは計算で確かめてから記事にしている
- 最初にカンプを見る:いきなり動くものより、静止画で見た目と見せる数字を決めてからのほうが、やり直しが少ない
- スマホで必ず見る:パソコンでは良くても、スマホだと文字や部品が小さすぎることがある
- ブログへの入れ方:記事に直接貼るより、サーバーに置いて「窓(iframe)」で埋め込むほうが、ブログのデザインとぶつからない
- 「機能名」を盛らない:公式にない機能名で紹介しない。何をしているかを正確に書く
まとめ
- 「遠くから拾うと早い」は、1個ずつ運ぶなら成り立たない。どちらも220mで同じ
- 遠くから拾って損をすることはない。差がつくのは、まとめて運べて、最後に端数の回が出るとき。3個までなら88m対112m(2個ずつ・5個ずつなら同じ)
- Claude(Opus 5.5)に、ブラウザで動くアニメーションを書いてもらった。専用の「アニメ機能」ではなく、Webの言葉で書いている
- 流れは、たとえ話を頼む → カンプを見る → 動くものを直す → 動画に書き出す
- 提案書、研修、ホームページの説明パーツ、SNS動画に使える
たとえ話は、言葉で聞くより、動いているのを見たほうが早く伝わります。気になっている「たとえ」があれば、一度Claudeに動かしてもらうと面白いと思います。
ふだんの制作の話や、作ったものの裏側は Instagram と X でも出しています。



















頼んだのは、「遠くのものから拾う」と「近くのものから拾う」を、ゲームみたいに見て分かる形で比べてほしい、というひとことでした。まず静止画のデザイン案が出てきて、それを見て「いいね」と返したら、次はもう動いていました。